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コンセプト

普段から気にしていることがあります。基本的には「依頼者の利益や事業性」と「公共性や社会性」への貢献や変革を同等に意識していることです。

公共性と街づくり

kokyou shisan kankyo desgin

 私たちが豊かさを追い求めることは当然です。流行の街に出かけたり、食事をしたりすることでも日常に豊かな瞬間を手に入れることができます。一方、家路につく時の落差の大きさに落胆することもあるでしょう。

 私たちを楽しませてくれる街は、商業的レスポンスによって演出されている場合のほかに、一人一人の積み重ねによっても変化と成長をさせることができるはずです。街並みには自分の場所とみんなの場所との境界に両者の中間領域があります。ここの仕掛けの如何によって街は大きく変化するのです。

 例えば、道筋に木漏れ日があふれ、四季折々に花を咲かせる、それが自分の街だとしたらどんなにすてきなことでしょう。しかも、それが自らの仕掛けでつくりあげられたものだとしたら喜びはいっそう増すはずです。

資産の継承

kokyo shisan kankyo desgin

 土地神話が崩壊して久しく、過熱していた住宅供給も飽和しつつあるようです。日本は大きな成長を遂げました。それが頂点に達したとき積み上げたモノが崩れゆく様を誰も止めることはできなかったこと、それすら忘れかけています。

 かつての成長は戦後の焼け野原から抜け出し、ひたすら豊かさを追い求めることでした。その結果現在のモノの豊かさを手にしているのですから、私たちは先輩たちに大いに感謝すべきでしょう。そのかわり忘れてしまった文化や慣習、心の豊かさは、次の世代が取り戻す役目を担っているのだと思います。

 日本には誇るべき文化的資質がもともと備わっているはずです。まっさきにすることは、今ある現状を理解し新しくするより先に、継承する行為に関心を示すことだと思います。

環境への働きかけ

kokyo shisan kankyo desgin

 私たちが手放したモノが、この国のなかでどのようなかたちで処分されていくのかをじっくりと考えてみた人は少ないでしょう。実際、リサイクルできず燃やせないモノのほとんどは、無残なかたちで私たちの見えないところに放置されているという悲しい事実があります。

 一方で、新しくてきれいなモノ、最新式で機能満載のモノなど、いろいろなモノを手に入れたいと願っています。このような気持ちを我慢するのはとてもつらいことです。

 だとすれば、一旦手に入れたモノは、永く大切に使い続けたいものです。壊れても、修理してでも使い続けたいようなモノ、今まで使っていたモノの方が新しいモノよりも魅力的であるようなモノ、そんなモノを自然と求めるセンスを身につけたいと思います。

デザインの合理性

kokyo shisan kankyo desgin

 かつての不動産は所有するだけで資産を増やす不思議な魔力を持っていました。今では動産や物品と同じように、所有するだけではひたすら目減りを待つしかないようです。

 利用価値以外に資産価値を向上させる方法はもうないのでしょうか。個人性や事業性のみにとどまる土地活用はもう限界のような気がするのです。私たちはその価値が特別な地域性と密接に関係していることに、とっくに気がついています。地域資産の向上に自ら能動的に取組むことこそ残された方法といえるでしょう。一人一人が地域評価を意識し、自分の事と共に周囲に目を向けることができれば、その街はきっと何年か後にすばらしい資産価値を持つことになっていると思います。

 建築はそれを誘導することが可能です。つまり優れたデザインとは、このような文化的資質を経済的合理性と共に導くとても重要な行為ではないかと思うのです。

建築家職能原則

<引用

 建築家は、これまでのすぐれた遺産を継承し、自然環境をまもり、自らの業務を通じて安全で快適な環境をつくり、人びとの共感と理解に支えられつつ、人間の幸福と社会文化の形成に寄与します。

 この建築家の業務は職能意識によって裏付けられています。
建築家職能を要約すると、次の五項目になります。

  1.依頼者と社会への対応
  2.専門家能力と研鑽(けんさん)
  3.自由と独立の立場
  4.権利と責任
  5.職能団体

1.依頼者と社会への対応

 建築家は依頼者の目的、期待に応えてその敷地の持つ特性を専門家能力によって正しく活かし、良質な建築をつくるために最大限の努力をします。

 しかし、建築は多くの利用者や、それが建てられる地域の環境形成に大きな影響を及ぼします。このように建築は、依頼者だけのものではなく公共性をもった大きな存在です。建築家は特定の依頼者の要請に応える努力とともに、地域環境や社会の中において建築のあるべき姿に対する明白な信念を持って、行動することが大切です。時として、依頼者と地域社会の利害関係が対立した場合でも、自己の信念に基づき、建築のもつ公共性を守る覚悟が必要です。

2.専門家能力と研鑽(けんさん)

 建築家には依頼者の様々な要求と同時に社会の要請に応えるため高度な専門家としての能力が求められます。

 建築は、幅広い技術分野を総合してつくられるものでありますが、建築家は単にデザインだけでなく、法律問題、経済性、耐久性、工事の監理、完成後の維持にいたるまで広範な分野についての専門家として依頼者の信頼に応えることとなります。又、拡大し分化しつつある関連技術を自らの哲学に基づき統合する役割を担っています。従って、建築家は常に芸術的感性を育み、新しい知識や技術などの修得を心掛け、専門的経験を積み、絶えず研鑽(けんさん)に努めることが必要です。

3.自由と独立の立場

 建築家は依頼者や社会に対し、個人の利益を離れた専門家としての助言を行う責任があります。

 公正中立の立場を維持するために建築家の立場は自由でなければなりません。そして依頼者の正当な権利を守り、建築家としての社会的正当性を貫くために建築家は工事施工の分野とは分離し、建築の生産、流通などの経済の機構の中で 独立した中立的第三者の立場を保持しなければなりません。これにより建築家は材料の選定、工事費の査定等の設計監理を依頼者に代わって適正に行うことが可能となります。職能意識に裏付けされ修得した見識に基づく判断は、優先されるべきです。

4.権利と責任

 建築家の自由と独立の立場を保持し、専門家能力を発揮するにはその業務を遂行できるだけの経済的な裏付けがなければなりません。

 自らの仕事に誇りをもって、責任を全うするためには適正な報酬が必要です。しかし、建築家の報酬は利益を得ることが第一の目的ではありません。これを受けることで建築家として自立し、公正な判断と業務の遂行が可能となります。 その結果、安全で快適な環境をつくり、有形無形に依頼者や社会に還元することによって責任を果すことができます。

5.職能団体

 建築家は、同じ理念を持つ人々によって職能団体を結成し、相互の交流・情報交換・技術研修・職能教育などを行い、自主的に定めた倫理規定・行動範囲を官印が守ることを宣言します。これにより会員の質と行動を、社会に対して保証します。連帯して職能を確立し、円滑な人間関係を築いていきます。

引用:日本建築家協会>

*エスアーキテクツはいまのところ複数ある職能団体のどこにも属していません。同じ職能や職域を持つ友人知人との地平、そこから生れる新たなつながりがより客観的で公平な関係をつくりやすく、そのほうが同様の理念をより効果的に発揮できる気がしています。



12/04/17 [9,544B]

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